
もちろん、狸はただの哺乳類の動物なんですが、江戸時代は、狐《きつね》と同様に、妖怪として扱われていましたヾ(๑╹◡╹)ノ"
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狂歌百鬼夜興
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『狂歌百鬼夜興《きょうかひゃっきやきょう》』[天保元(1830)年刊、菊廻屋真恵美《きくのやまえみ》編、青洋《せいよう》画、虎岳《こがく》画]
大阪公立大学中百舌鳥図書館所蔵(CC BY)国書データベース
※カラーの画像は、こちらでご覧になれます。国書データベース
※以下、赤字の書入れは筆者。
【原文】
▢狸《たぬき》
八畳に 身を安くして 腹鼓《はらつゞみ》 ちつとも人に 構《かま》はざりけり 岩成《がんせい》
【現代語訳】
▢狸《たぬき》
キャン玉を八畳に広げて、人がうるさがろうが、少しも気にかけず、狸は気楽に腹鼓を打つのです。 by 岩成《がんせい》

挿絵は狸がバチを持って腹鼓を叩いている姿が描かれてます。
どこからともなく聞こえてくる鼓の音は、狸が腹の皮を膨らませて打っている腹鼓だろう、というやつですね♪
今と違ってこの頃はさえぎるような大きな建物もなく、夜も騒がしくなかったでしょうから、目では全く確認できないようなかなり遠くの音も、風に乗って聞こえてきたのでしょうね。
ちなみに、狸のキャン玉は、八畳にも広がると言われていました。
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狂歌百鬼夜狂
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『狂歌百鬼夜狂《きょうかひゃっきやきょう》』[天明五(1785)年刊、平秩東作《へづつとうさく》編]狂歌百鬼夜狂 / へつゝ東作 [編]
【原文】
狸 参和《さんな》
冬枯れて 荒れたる野辺の 腹鼓《はらつゞみ》 是や狸の 化けの皮音[「化けの皮」と「皮音」を掛けた]
【現代語訳】
狸 by 唐来参和《とうらいさんな》
冬になって草木が枯れ、荒れ果てた野原に、鼓の音が響き渡ります。
化けの皮をはがすと[正体は]、狸が腹の皮を叩いて出す腹鼓《はらつづみ》の音なのでした。

やはり狸は腹鼓を打つイメージが強いみたいです。
唐来参和は、今ではあまり聞かない名前ですが、当時は著名な作家でした。
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画図百鬼夜行---------------------

『画図百鬼夜行』[安永五年(一七七六)年刊、鳥山石燕作画]

はい、普通のリアルに近い狸が描かれていますね(笑)
満月に向かって腹鼓を打とうとしている様子でしょうか。
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百種怪談妖物双六---------------------


『百種怪談妖物双六《むかしばなしばけものすごろく》』[安政五(一八五八)年刊、一寿斎芳員画]
【原文】
▢丁鳴原《たんぽはら》の腹鼓《はらつゞみ》
腹の皮《かは》損じて、一ト廻《まは》り休み
二 九尾《きうび》の狐《きつね》
三 茂林寺《もりんじ》
四 幽谷響《やまびこ》
五 見越入道《みこしにうだう》

今回は、江戸時代の妖怪双六に描かれている狸も見てみましょう。
満月の下で狸が腹鼓を打っている様子です。
キャン玉も大きく描かれています。
描かれている花は、紫が桔梗《ききょう》で、黄色が女郎花《おみなえし》でしょうかね。
十五夜のお月様なのでしょうか、どちらの花も「秋の七草」です。
「腹の皮損じて、一ト廻り休み」、と書かれているように、このマスは一回休みのマスです。
調子に乗って叩きすぎたのか、腹の皮が破れて一回休みということですね(笑)
数字と妖怪の名が描かれていますが、この時代の双六は、今の双六と違って、サイコロの目が出たマスに移動したようです。
つまり、「一」が出たら「九尾の狐」のマスに、「三」が出たら「茂林寺」のマスに移動すると言った具合です。
さて、皆さんは「たんぽ原」ってどこ?ってお思いでしょう。
「たんぽ原」はおそらく実在の地名ではないと思われます。
「たんぽ」は綿などを布で包んで球状にして、棒を取り付けたりしたものです。
墨をつけてポンポンと叩いて拓本をとったり、刀をポンポンと叩いて掃除するときなどに使います。
この「ポンポン」という動作から、腹鼓の音を連想しますよね。
いや、狸の膨らんだお腹が、たんぽの形みたいでもあります。
「たんぽ」は漢字で「打包」と書きます。
つまり、「包《つつみ》」→「鼓《つづみ》」、「原」→「腹」、従って「たんぽ原」→「打鼓腹」ということで、「たんぽ原」は「腹鼓を打つ」と言う意味でシャレてつけられた架空の地名でしょう。
「丁鳴」という字を「たんぽ」と読ませていますが、これは腹鼓が「数丁[一丁(町)は約109メートル]もの距離まで鳴り響く」という意味で当てられた、完全な当て字でしょうね。

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