浮き憂き江戸文学♪

江戸時代の作品を崩し字と共に分かりやすく紹介します♪

2024年03月

[1]相生松の精 VS 木魅 ~『怪物画本』VS 鳥山石燕~

haname 以前紹介した、鳥山石燕の妖怪画を、ほぼそのままパクって作られた、『怪物画本《かいぶつえほん》』というに描かれた妖怪を、オリジナル鳥山石燕の妖怪画比較してみようという、意味があるかよく分からないことをします(笑)


『怪物画本』は、李冠光賢《りかんみつかた》が描いた鍋田玉英《なべたぎょくえい》(明治期の浮世絵師)が模写したということになっているのですが、李冠光賢って人物情報この作品以外、見当たらないんです。
 おそらく、鳥山石燕パクリって言うのを誤魔化すために、李冠光賢って人物捏造したのではないのかなと。

『怪物画本』に描かれている妖怪ラインナップは、


相生松の精、鵺・実方霊入内雀、守屋霊寺突き・酒呑童子、玉藻前・笑女、大仏怪物・葵の上、嫌味・挑灯火、ぶるぶる・宗玄火、姥が火・雨女郎、紅葉狩・釣瓶女、青女房・庫裏婆々化、白粉婆々・野寺坊、山男・一目坊主、天狗・見越入道、幽霊・姑獲鳥、海座頭・狸腹鼓、狐火・蛇婆々、清姫・死霊、生霊・吹消婆々、狸坊・火車、家鳴・猫又、頼豪


 です。

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怪物画本
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01_0101_02
『怪物画本《かいぶつえほん》』[明治十四(一八八一)年刊、李冠光賢《りかんみつかた》画、鍋田玉英《なべたぎょくえい》模写]


※画像の調整、赤字の書入れは筆者。


haname【解説】



「相生松《あひおひのまつ》の精《せい》」書かれています。


 相生《あいおい》の松とは、雄松雌松二つの松が、一つの幹つながっている松の事を言います。


 高砂神社のものが有名で、お爺さんお婆さん姿をした宿っている言われています。


 おそらく高砂神社などの伝承を元に、「相生松の精」付けたのでしょうが、を見る限り、ではつながっておらず、独立した二本ですよね。





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画図百鬼夜行
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GazuHyakkiyagyo1Tori_0011GazuHyakkiyagyo1Tori_0010+
『画図百鬼夜行』[安永五年(一七七六)年刊、鳥山石燕作画]




【原文】



○木魅《こだま》


 百年の樹にハ神有りて、形を現すと言ふ。



【現代語訳】



○木魅《こだま》


 樹齢百年の木には、宿ってその姿現すと言います。

haname【解説】



『怪物画本』は、この絵をほぼそのままパクっていますが、重ねてみると、微妙に違って重なり合うことは無いので、トレースしたわけではなく、やはり模写範疇ですかね。


『怪物画本』は、「木魅」「相生松の精」変えて、説明文カットして、着色施されています。


 確かに松の木描かれていますが、本文中相生松という表現はありません。


 描かれているのは、お爺さんお婆さん姿現れた、樹齢百年の木宿った神です。


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三つ目アイコン ぼ、パクリじゃなくて、オリジナルの妖怪だよね?三つ目ヾ(๑╹◡╹)ノ"




haname あ、パクリというか、妖怪双六三目大僧パロって作った北見ヾ(๑╹◡╹)ノ"

 たぶんこれが三つ目の初登場回北見ヾ(๑╹◡╹)ノ"





画図百鬼夜行
鳥山 石燕
国書刊行会
1992-12-01




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[25]高入道 ~『狂歌百鬼夜興』に描かれた妖怪たち~

haname 今回は、見越入道大入道同系列の、大きな入道の妖怪高入道ですヾ(๑╹◡╹)ノ"


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狂歌百鬼夜興
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高入道01高入道02
『狂歌百鬼夜興《きょうかひゃっきやきょう》』[天保元(1830)年刊、菊廻屋真恵美《きくのやまえみ》編、青洋《せいよう》画、虎岳《こがく》画]
大阪公立大学中百舌鳥図書館所蔵(CC BY)国書データベース
※カラーの画像は、こちらでご覧になれます。国書データベース
※以下、赤字の書入れは筆者。


【原文】

髙入道《たかにふだう》  梅止《ばいし》

 衿巻《えりまき》を 外れて高き 入道に 我が首筋も 寒く為《な》りけり


【現代語訳】

高入道《たかにゅうどう》  by 梅止《ばいし》

 マフラーが外れるほど高く首を伸ばす入道を見て、首筋ゾッとして寒くなりました。


haname【解説】

 狂歌は、外れたのは首を高く伸ばした高入道のマフラーですが、それを見たゾッとして、マフラー外れてもいないのに、首筋寒くなったという内容です。

 挿絵は、船幽霊が出てくるを持った、首を長く伸ばした高入道の姿が描かれています。



haname 高入道名前違うだけで、実際のところは、見越入道大入道ほぼ同じ妖怪だと思われるのですが、「高入道」という名前では、『狂歌百鬼夜狂』にも、『狂歌百物語』にも、鳥山石燕の妖怪画集にも登場しません。

 これでは、尺が足りなすぎるので、『絵本小夜時雨』収録されている、「高入道」が登場するお話紹介します。



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絵本小夜時雨
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Shungyosai Takanyudo.jpg

※Wikipediaより
『絵本小夜時雨』[享和元(1801)年刊、速水春暁斎作]




【原文】

 天明《てんめい》の末《すへ》、都《ミヤこ》御幸町《ごかうまち》五条《ごじやう》の北《きた》に、怪物《ばけもの》出《いづ》る由《よし》、沙汰《さた》せり。
 其《そ》の町《まち》に銭屋九兵衛《ぜにやきうべゑ》と云へる者《もの》、深夜《しんや》に及《およ》んで、外面《そとづら》へ出るに、月《つき》いと明《あき》らかなるに、垣《かき》を隔《へだ》てる千栽《せんざい》[前栽]の木《き》も、玉《たま》を欺《あざむ》く光《ひか》り隈《くま》無く見《ミ》へ渡《わた》りしが、俄《にわ》かに空《そら》掻《か》き曇《くも》り、今迄《いままで》見へし月影《つきかげ》も冴《さ》へず、真《しん》の闇《やミ》と變《へん》じ、其の高《たか》さ丈餘《じやうよ》の高入道《たかにうどう》、彼《か》の九兵衛を睨《にら》ミ、立《た》ち居《ゐ》たり。
 元来《ぐわんらい》不歒《ふてき》の者なれバ、有《あ》り合《あ》ふ割木《わりき》、追《お》つ取つて、投げ付けくると等《ひと》しく、彼の高入道《たかにうどう》、其の儘《まゝ》消《き》へ失《う》せ、元の月夜《つきよ》と成《な》りきと。
 其の後《のち》ハ、彼の怪物《ばけもの》も出《い》でざりしとなん。
※粗い画像の資料しか見られなかったので、間違ってたらスイマセン。


【現代語訳】

 天明[一七八一~一七八九年]末頃都の御幸町《ごこうまち》五条通の北にあたる場所に、化け物が出るとになりました。

 その町銭屋九兵衛《ぜにやきゅうべえ》というがいましたが、ある時深夜に出ると、がとても明るく垣根の向こうの庭の植込みの木の、葉の上の玉のような露の光まで、はっきり見えていました。

 しかし、急に暗くなり、今まで見えた月の光見えなくなりました。

 そして、真っ暗闇となると、その高さ一丈[約3メートル]ちょっと高入道が現れ、この九兵衛睨《にら》んで立っていました。

 九兵衛は、元々、大胆で恐れを知らない者だったので、ちょうどそこにあった木片を急いで手に取って、高入道投げつけました。

 投げつける同時に、この高入道は、そのまま消え失せて、元の月夜戻りました。

 その後は、この化け物出てこなくなったそうです。


haname【解説】

 京都の御幸町《ごこうまち》に現れた高入道お話ですが、木を投げつけただけで消えたという、なんとも、面白みもないお話です。

 挿絵は、高入道投げつけようとしている九兵衛描かれています。


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三つ目アイコン 今回「『狂歌百鬼夜興』に描かれた妖怪たち」完結だね!三つ目ヾ(๑╹◡╹)ノ"


haname この三つ目のコーナーも、今回完結にしたいね!北見ヾ(๑╹◡╹)ノ"



妖怪画本・狂歌百物語
京極 夏彦
国書刊行会
2008-08-01










haname この記事妖怪の名前に、各記事のリンク貼ってありますので




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[24]舟幽霊 ~『狂歌百鬼夜興』に描かれた妖怪たち~

haname 今回は、に現れて沈めようとする舟幽霊ですヾ(๑╹◡╹)ノ"


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狂歌百鬼夜興
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舟幽霊01舟幽霊02
『狂歌百鬼夜興《きょうかひゃっきやきょう》』[天保元(1830)年刊、菊廻屋真恵美《きくのやまえみ》編、青洋《せいよう》画、虎岳《こがく》画]
大阪公立大学中百舌鳥図書館所蔵(CC BY)国書データベース
※カラーの画像は、こちらでご覧になれます。国書データベース
※以下、赤字の書入れは筆者。


【原文】

舟幽灵《ふないうれい》  梅季《ばいき》

 西海《さいかい》へ 沈ミし霊の 燃ゆる火に 陰弁慶《かげべんけい》も 出て祈れかし


【現代語訳】

舟幽霊  by 梅季《ばいき》

 西海に沈んだ霊[九州の壇ノ浦に沈んだ平家の霊]燃えている火を見て、家の中でしか威張れない陰弁慶[「内弁慶」と同じ意味]憐《あわ》れんで、外に出てきて祈っています。


haname【解説】

 この狂歌での舟幽霊は、平家の霊による怪火のようです。
 源氏の弁慶から生まれた、陰弁慶という言葉を用いてシャレています。

 挿絵は、高入道が持つから出てきた、に乗って柄杓《ひしゃく》を持つ舟幽霊描かれています。


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狂歌百鬼夜狂
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『狂歌百鬼夜狂《きょうかひゃっきやきょう》』[天明五(1785)年刊、平秩東作《へづつとうさく》編]狂歌百鬼夜狂 / へつゝ東作 [編]


【原文】

   舩幽灵《ふないうれい》  有正《ありまさ》

 面色《めんしよく》も 青海原《あをうなばら》に 浮かみしハ 舩幽灵を 言ひに出《いだ》しか


【現代語訳】

   船幽霊《ふなゆうれい》  by 算木有正《さんぎのありまさ》

 青海原[青く広い海]に映った自分の青白い顔色を見て、「船幽霊だ!」言い出したのでしょうか。


haname【解説】

 船幽霊の正体は、海面に映った自分の顔だったということでしょうか。


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今昔画図続百鬼
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『今昔画図続百鬼』[安永八(一七七九)年刊、鳥山石燕作画]



【原文】

   舟幽霊《ふなゆうれい》

 西國《さいごく》、又は北國《ほくこく》にても、海上《かいじやう》の風激しく、浪《なミ》高き時ハ、波の上に人の形の物、多く現れ、底《そこ》無き柄杓《ひしやく》にて、水を汲《く》む事有り。
 是を舟幽灵《ふなゆうれい》と言ふ。
 是は門渡《とわた》る舟の楫《かぢ》を絶えて、行方《ゆくえ》も知らぬ魂魄《こんぱく》の残りなるべし。


【現代語訳】

   舟幽霊《ふなゆうれい》

 西国、または北国でも、海上の風激しく波が高い時は、波の上人の形をした物が多く現れ底が無い柄杓《ひしゃく》で、水を汲む事があって、これを舟幽霊と言います。
 これは海を渡る舟遭難して、行方不明になった霊魂が、この世残ったものでしょう。


haname【解説】

 舟幽霊「柄杓をよこせ」言うので、そのままの柄杓渡すと、船の中汲まれ船が沈むが、底を抜いた柄杓渡すと、水が汲めないので助かる、というのがよく聞く話です。
 しかし、ここでの舟幽霊最初から底の無い柄杓を持っているようで、船の中汲みようがないので、人畜無害ですねヾ(๑╹◡╹)ノ"
 どちらにしても、舟幽霊は、海が荒れている時は、船を出さないようにする戒めとして、生まれたのかもしれませんね。

 挿絵は、薄くて見にくいかもしれませんが、船に乗って柄杓を持つ舟幽霊描かれています。


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狂歌百物語
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狂歌百物語
『狂歌百物語《きょうかひゃくものがたり》』三編「牡丹燈籠」[嘉永六(一八五三)年刊、天明老人尽語楼《てんめいろうじんじんごろう》編、竜斎正澄《りゅうさいまさずみ》画]
※富山大学附属図書館ヘルン文庫所蔵 富山大学学術情報リポジトリ


haname【解説】

  挿絵は、霊の形になって、船を襲っています。


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船幽霊関連記事(本館)
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三つ目アイコン 柄杓よこせ三つ目ヾ(๑╹◡╹)ノ"


haname ん? この柄杓で、お前から水を掛ければいいのか? それともそのままパコンと叩けばいいのか?北見ヾ(๑╹◡╹)ノ"



妖怪画本・狂歌百物語
京極 夏彦
国書刊行会
2008-08-01









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[23]火柱 ~『狂歌百鬼夜興』に描かれた妖怪たち~

haname 今回は、火の気のない所に立ち上る怪火一種火柱ですヾ(๑╹◡╹)ノ"ヾ(๑╹◡╹)ノ"


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狂歌百鬼夜興
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火柱01火柱02
『狂歌百鬼夜興《きょうかひゃっきやきょう》』[天保元(1830)年刊、菊廻屋真恵美《きくのやまえみ》編、青洋《せいよう》画、虎岳《こがく》画]
大阪公立大学中百舌鳥図書館所蔵(CC BY)国書データベース
※カラーの画像は、こちらでご覧になれます。国書データベース
※以下、赤字の書入れは筆者。


【原文】

火柱  加賀丸
 太かりし 肝を消しても 見る物は 風に燃え立つ 夜半《よは》の火柱


【現代語訳】

▢火柱  by 加賀丸

 太かった肝消してしまったのは、風の中でも消えず燃え立つ火柱見てしまったからでした。
[「肝が太い」は「物事に動じない」、「肝を消す」は「非常に驚く」を意味する慣用表現]


haname【解説】

 狂歌は、消したけど、火柱消えなかったというシャレですね。

 挿絵は、火消婆消されそうになっている火柱です。
 どうか、妖怪仲間でしょうから、消さないであげてください(笑)


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妖怪百談
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haname 火柱妖怪と言うより怪奇現象なので、火柱出たという記録的なものはあるのですが、『狂歌百鬼夜狂』にも、『狂歌百物語』にも、鳥山石燕の妖怪画集にも登場しません。。。

 そこで、あまりにも尺が足りないので、明治の妖怪博士井上円了火柱についての記述興味深かったので、紹介することにします。

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『妖怪百談』[明治三十一(一八九八)年刊、井上円了作]



【現代語訳】

   第七十六段 火柱《ひばしら》の話

 世間では、火柱の立つ時は、火柱の倒れた方角で、必ず火災が起こると言われています。

 この事が、ホントウソか確かめるのが難しいですが、立ち上がって消える事は、事実としてあるようです。

 思うに、燐火《りんか》[火の玉、人魂]一種でしょう。

 ところで、はかつて、このような事聞きました。

 ある町で、「火柱が立った」というがあって、すぐに火災起こりました。

 そのことについて、噂の発生源追及すると、その辺りに放火をして悪事を働く盗賊がいて、放火をしようとしたに、火災放火によるものと思わせないため、あらかじめ「火柱が立った」言いふらしていた判明したそうです。

 なので、「火柱が立つと火災が起こる」という俗説も、やはり怪しい物です。


haname【解説】

 明治の頃の文章でも、まだ古文的なので、やっぱり現代語訳必要ですよね。

 要するに、井上円了は、火柱と言う現象存在するものの、「火柱が立つと、倒れた方角で火災が起こる」などという噂話は、盗賊放火隠すために[放火ではなく火柱が立ったことによる火災と思わせるために]「火柱が立った」言いふらした例もあるので、信憑性が低い言っています。


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三つ目アイコン 放火はしないけど、放屁はするよ三つ目ヾ(๑╹◡╹)ノ"


妖怪画本・狂歌百物語
京極 夏彦
国書刊行会
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プロフィール

北見花芽

文学やったり音楽やったり美学を貫いたりしてる自由人です♪
一応、それなりに江戸文学の専門的な研究をして、それなりの学位を取得していますヾ(๑╹◡╹)ノ"

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