浮き憂き江戸文学♪

江戸時代の作品を崩し字と共に分かりやすく紹介します♪

2023年12月

[15]毛女郎 ~『狂歌百鬼夜興』に描かれた妖怪たち~

haname 今回は、現代ではあまりメジャーではありませんが、江戸時代には意外人気があった毛女郎ですヾ(๑╹◡╹)ノ"
 ただ、でおおわれて、目鼻口分からないというだけで、何をする妖怪かはよく分かりません


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狂歌百鬼夜興
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毛女郎01毛女郎02
『狂歌百鬼夜興《きょうかひゃっきやきょう》』[天保元(1830)年刊、菊廻屋真恵美《きくのやまえみ》編、青洋《せいよう》画、虎岳《こがく》画]
大阪公立大学中百舌鳥図書館所蔵(CC BY)国書データベース
※カラーの画像は、こちらでご覧になれます。国書データベース
※以下、赤字の書入れは筆者。


【原文】

毛女郎《けぢよらう》  守棟《もりむね》

 如何《いか》ならむ 膚《はだえ》はさすが 知らねども あな恐ろしの[感動詞の「あな」と「毛穴」を掛けたか] 思ふ毛女郎


【現代語訳】

毛女郎《けじょろう》  by 守棟《もりむね》

 が隠しているので、どんな肌(顔)をしているか、さすがに分からないのですが、毛穴だらけで毛むくじゃら毛女郎を見ると、やはり恐ろしく思うのです。


haname【解説】

 このページ挿絵遊郭モチーフにしているので、まさしく毛女郎[「女郎」は「遊女」のこと]ピッタリ妖怪ですね。

 毛だらけという怖い見た目で、驚かすだけ妖怪なんでしょうか???


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狂歌百鬼夜狂
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『狂歌百鬼夜狂《きょうかひゃっきやきょう》』[天明五(1785)年刊、平秩東作《へづつとうさく》編]狂歌百鬼夜狂 / へつゝ東作 [編]


【原文】

   毛女郎  土師掻安《はじのかきやす》

 夜更けては 凄《すご》き縄手《なはて》の 長雨《ながあめ》[「眺め」と掛けた]も 振り向く顔の 毛女郎かな


【現代語訳】

   毛女郎  by 土師掻安《はじのかきやす》

 が更けて、長雨の中、もの寂しい縄手道《なわてみち》[一本道、あぜ道]歩きながら前を眺めていると、女性歩いているのが見えます。
「こんなに、こんな女性が歩いているのは、不思議だな」と、思っていると、その女性振り向きました。
 なんと、その女性の顔毛だらけが見えず、「これが毛女郎か!」と驚いたのでした。


haname【解説】

 びしょ濡れになってが隠れた女性を、と言うこともあり、毛女郎見間違えただけだったりしてヾ(๑╹◡╹)ノ"


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今昔画図続百鬼
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Konjakuzokuhyak2Tori_0023Konjakuzokuhyak2Tori_0023+
『今昔画図続百鬼』[安永八(一七七九)年刊、鳥山石燕作画]



【原文】

   毛倡妓《けじようらう》

 或る風流士《たはれお》[戯れ男]、浮かれ女《め》の元に通ひけるが、高樓《たかどの》の連子《れんじ》の前にて、女の髪《かみ》打ち乱したる後ろ影を見て、その人かと前を見れば、額《ひたい》も面《おもて》も一チ面に髪《かみ》生ひて、目鼻も更に見えざりけり。
 驚きて絶え入りけるとなん。


【現代語訳】

   毛倡妓《けじょうろう》

 ある遊び人[好色男]は、お気に入りの遊女の元に毎日のように通っていました。
 ある時、遊女屋格子戸[格子窓?]で、を振り乱した後姿を見ました。
 愛しの遊女かと思ってを見ると、顔中が生えていて、目鼻も全く見えませんでした。
 遊び人は驚いて気を失ってしまいましたとさ。


haname【解説】

 この鳥山石燕の妖怪画集毛女郎初出だと思われます。
 やはり、顔中毛だらけの女が現れたと書かれているだけで、それが一体、何者なのかさっぱり分かりません。
 お気に入りの遊女正体毛女郎だったのか?
 それとも全く別の妖怪なのか?
 どちらにしても、「遊女遊びは、ほどほどに」ということを言っているのでしょうかね。


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三つ目毛


haname
 なに? その変な髪の毛は?北見ヾ(๑╹◡╹)ノ"


三つ目アイコン 毛女郎ウイッグ作ってくれたの三つ目ヾ(๑╹◡╹)ノ"


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毛女郎関連記事(本館)




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妖怪画本・狂歌百物語
京極 夏彦
国書刊行会
2008-08-01









◆北見花芽のほしい物リストです♪ 

[14]狐火 ~『狂歌百鬼夜興』に描かれた妖怪たち~

haname 今回は、火の気がないのに謎の火が燃えている現象、いわゆる怪火《かいか》一種狐火《きつねび》ですヾ(๑╹◡╹)ノ"
 怪火には鬼火青鷺火などいろいろありますが、狐火が一番メジャーですかね。
 狐火が起こす怪現象で、そもそも、同様に、狐自体当時妖怪扱いされていました。


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狂歌百鬼夜興
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狐火
『狂歌百鬼夜興《きょうかひゃっきやきょう》』[天保元(1830)年刊、菊廻屋真恵美《きくのやまえみ》編、青洋《せいよう》画、虎岳《こがく》画]
大阪公立大学中百舌鳥図書館所蔵(CC BY)国書データベース
※カラーの画像は、こちらでご覧になれます。国書データベース
※以下、赤字の書入れは筆者。


【原文】

▢狐火  鰕丸《えびまる》

 若草の 青む春野を 見渡せば 雨に混じりて 燃ゆる狐火


【現代語訳】

▢狐火  by 鰕丸《えびまる》

 若草青々と茂る春の野原見渡すと、に混じって狐火青く燃えているよ。


haname【解説】

 狂歌は、が降って火の気がないはずなのに、春の野火が燃えているのが見える、という怪現象を詠んでいます。
く燃ゆる」とは書かれていませんが、む春野」火の色青い事を示しています。

 このページの挿絵遊郭モチーフにして描かれているので、狐火天狗のお供の下男として描かれ、夜道照らしています。
 この狐さんとかから火を吐いているわけではなく、普通に松明《たいまつ》くわえていますね。


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画図百鬼夜行
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石燕石燕+
『画図百鬼夜行』[安永五年(一七七六)年刊、鳥山石燕作画]




haname【解説】

 先行鳥山石燕の妖怪画集では、特に妖怪っぽくはないリアルな狐さんが、三匹描かれています。
 左右の狐は、『狂歌百鬼夜興』同様に、松明[ひょっとしたら骨?]くわえており、真ん中の狐お尻上げ、そのには骨のようなもの描かれています。


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狂歌百物語
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狂歌百物語
『狂歌百物語《きょうかひゃくものがたり》』[嘉永六(一八五三)年刊、天明老人尽語楼《てんめいろうじんじんごろう》編、竜斎正澄《りゅうさいまさずみ》画]
※富山大学附属図書館ヘルン文庫所蔵 富山大学学術情報リポジトリ



haname 【解説】

 こちらも妖怪っぽくないリアルな狐さん描かれていますが、松明くわえているわけではなく、左横は、口から吐いたのでしょうか?


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本朝食鑑
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haname これだけでは尺が足りないので、当時狐火について書かれた記述を少し紹介します。

本朝食鑑
『本朝食鑑』巻十一[元禄十(一六九七)年刊、人見必大《ひとみひつだい》作]



【原文】

 若《も》し、夜行、忽《たちま》ち野火《やくわ》を見るに、其の青く燃ゆるは、狐尾《きつねのを》、火を放つ也。
 或《あるい》は、謂《い》ふ、狐、人の髑髏《どくろ》、馬の枯骨《ここつ》、及び、土中の朽木《くちき》を取りて、以て、火光《くわくわう》を作すと。
 未だ詳《つまび》らかならず。


【現代語訳】

 もし、に歩いていて、思いがけなく野原謎の火を見たなら、その青く燃えている火は、狐の尾が放ったです。
 また、は、人のドクロ馬の白骨、及び、土中の朽《く》ち木を使って、火の光作ると言います。
 しかし、その詳細はまだ明らかになっていません。



haname 【解説】

 やはり、狐火野原に出て、青いようです。
 尻尾ビュンっと振ったり地面こすったりして、火を起こしたのでしょうか?

 ほかのとして、は、人のドクロ馬の骨土中の朽ち木を使って火を作ったと書かれています
 鳥山石燕の絵描かれていた、骨らしきものがそうでしょうか?
 が、単にそれらを燃やしたのか、化学反応的な作用を利用したのか、いずれにしても、詳細は不明だそうでヾ(๑╹◡╹)ノ"


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haname
 うわあ、狐火だ!北見ヾ(๑╹◡╹)ノ"


三つ目アイコン 違う、違う、僕の頭光ってるだけだよ!三つ目ヾ(๑╹◡╹)ノ"


妖怪画本・狂歌百物語
京極 夏彦
国書刊行会
2008-08-01









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[13]天狗 ~『狂歌百鬼夜興』に描かれた妖怪たち~

haname 今回もメジャーな妖怪天狗でございますヾ(๑╹◡╹)ノ"
 天狗と言えば鼻が長いのが特徴的ですが、この時代別タイプ主流だったようでヾ(๑╹◡╹)ノ"


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狂歌百鬼夜興
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天狗
『狂歌百鬼夜興《きょうかひゃっきやきょう》』[天保元(1830)年刊、菊廻屋真恵美《きくのやまえみ》編、青洋《せいよう》画、虎岳《こがく》画]
大阪公立大学中百舌鳥図書館所蔵(CC BY)国書データベース
※カラーの画像は、こちらでご覧になれます。国書データベース
※以下、赤字の書入れは筆者。


【原文】

▢天狗  湖丈《こぢやう》

 恐ろしや 梢《こずゑ》に人を 裂き掛ける 桜の外に 鼻高津鳥《はなたかつとり》


【現代語訳】

▢天狗  by 湖丈《こじょう》

 高津鳥《たかつとり》[天狗の別名]と言うだけあって、のように桜の枝に、を裂いて掛けておいて[百舌鳥《もず》などの鳥は獲物を枝に刺しておく習性がある]鼻高々《はなたかだか》[「得意げに」の意。天狗の鼻が高いことをふまえる]と眺めているとは恐ろしい[「鼻高々」と「高津鳥」を掛ける][桜の木の病気「てんぐ巣病」とも関連するか?]


haname【解説】

 うひゃあ、天狗鳥のモズのように、狩った人間に刺して保存して、から食べに来るということです、ガクブル

 このページの挿絵は、遊郭イメージして描かれているので、天狗遊客に扮しています。
 うちわ隠していますが、長い鼻が出てしまっていますねw


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狂歌百鬼夜狂
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『狂歌百鬼夜狂《きょうかひゃっきやきょう》』[天明五(1785)年刊、平秩東作《へづつとうさく》編]狂歌百鬼夜狂 / へつゝ東作 [編]


【原文】

   天狗  掻安《かきやす》

 どつと笑ふ 嵐の聲に 鞍馬山《くらまやま》[「暗《くら》ます」と掛けた] 木《こ》の葉天狗の 皆散りにける


【現代語訳】

   天狗  by 土師掻安《はじのかきやす》

 一斉《いっせい》に笑う声のような嵐の音くらまされ[驚ろかされ]鞍馬山《くらまやま》木《こ》の葉天狗[小さい天狗のこと]みんな木の葉散るように逃げていきました。


haname【解説】

 木《こ》の葉天狗は、天狗の中でも下っ端の天狗のことを言います。
 鞍馬山といえば、鞍馬天狗有名ですが、木の葉天狗はその手下でしょうかね。


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画図百鬼夜行
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石燕+
『画図百鬼夜行』[安永五年(一七七六)年刊、鳥山石燕作画]



haname【解説】

 これは完全に鳥の姿ですね。
 天狗山伏のイメージ強いのですが、この時代鳥のイメージもかなり強かったみたいですね。


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狂歌百物語
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狂歌百物語
『狂歌百物語《きょうかひゃくものがたり》』[嘉永六(一八五三)年刊、天明老人尽語楼《てんめいろうじんじんごろう》編、竜斎正澄《りゅうさいまさずみ》画]
※富山大学附属図書館ヘルン文庫所蔵 富山大学学術情報リポジトリ



haname 【解説】

『狂歌百鬼夜興』異なり、ここで描かれているのは、烏天狗《からすてんぐ》のようです。
 木の葉天狗鳥のような姿をしていると言われますが、烏天狗との区別曖昧《あいまい》です。


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三つ目アイコン 僕も天狗になれるかなあ三つ目ヾ(๑╹◡╹)ノ"


haname いつも調子に乗って天狗になってるじゃないか北見ヾ(๑╹◡╹)ノ"


妖怪画本・狂歌百物語
京極 夏彦
国書刊行会
2008-08-01









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[12]一つ眼 ~『狂歌百鬼夜興』に描かれた妖怪たち~

haname 一つ目妖怪界のスターとでも言うべき、超メジャーな妖怪で、いろんな姿シチュエーション登場しますよね。


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狂歌百鬼夜興
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一つ眼01一つ眼02
『狂歌百鬼夜興《きょうかひゃっきやきょう》』[天保元(1830)年刊、菊廻屋真恵美《きくのやまえみ》編、青洋《せいよう》画、虎岳《こがく》画]
大阪公立大学中百舌鳥図書館所蔵(CC BY)国書データベース
※カラーの画像は、こちらでご覧になれます。国書データベース
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【原文】

▢一ツ眼《め》

 宿借らむ 灯火《ともしび》と見て 立ち寄れば 野寺の門に 一つ目小僧


【現代語訳】

▢一つ眼《め》

 今晩の宿借りようと思いまして、家の灯火らしきものが見えたので立ち寄ってみましたら、灯火ではなくて、野寺の門に立つ一つ目小僧光っていたのでした、ぎゃー!


haname【解説】


 狂歌の内容は、旅の途中、「どうしよう、今晩泊まる所がないなあ、あ、あそこに家の灯火が見える! あそこに泊めてもらおう、助かった~!」って近寄ってみたら、ではなくて野寺で、しかも灯火ではなくて一つ目小僧の光る目だった、という恐怖体験です(笑)


 挿絵は、舐め女宮中に仕える官女姿なので、それに合わせて一つ目宮中に仕える蔵人姿に描かれていて、二人破れ車を引いています。



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狂歌百鬼夜狂
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『狂歌百鬼夜狂《きょうかひゃっきやきょう》』[天明五(1785)年刊、平秩東作《へづつとうさく》編]狂歌百鬼夜狂 / へつゝ東作 [編]


【原文】

    一つ目小僧  光《ひかる》

 雨降りて 振り出《いだ》したる 一つ目の 小僧は轆轤《ろくろ》 首の裏目《うらめ》歟《か》


【現代語訳】

   一つ目小僧  by 頭光《つむりひかる》

 雨降ってサイコロ振ったようにコロンと出てきた一つ目小僧は、サイコロだったらろくろ首裏の目だよね。


haname【解説】

 なんで、が降って、一つ目小僧が出てきたか。
 それは、小僧系の妖怪雨の日に出るのが定番だからです。

「雨が降る「サイコロを振る掛けているわけですが、サイコロつ目小僧ろく(六)ろ首というシャレです。
 恐ろしさのあまり、例える必要もないのに、思わずサイコロ例えてしまったのでしょうか(笑)


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狂歌百物語
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狂歌百物語
『狂歌百物語《きょうかひゃくものがたり》』[嘉永六(1853)年刊、天明老人尽語楼《てんめいろうじんじんごろう》編、竜斎正澄《りゅうさいまさずみ》画]
※富山大学附属図書館ヘルン文庫所蔵 富山大学学術情報リポジトリ



haname 【解説】

 本編中では「一目」書かれていますが、目録では「一目小僧」書かれています。

 笹藪からを出す一つ目、どういうシチュエーションなのかよくわかりません(笑)


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けへ目ひとつ やった~! こちらに引っ越してから初登場一つ目だよ、よろしくね!ヾ(๑╹◡╹)ノ"


尾州の良男


三つ目アイコン 三つ目も引き続きよろしくね!三つ目ヾ(๑╹◡╹)ノ"


haname え、えと、二つ目もよろしくね!北見ヾ(๑╹◡╹)ノ"


妖怪画本・狂歌百物語
京極 夏彦
国書刊行会
2008-08-01







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[11]舐め女 ~『狂歌百鬼夜興』に描かれた妖怪たち~

haname 今回は長い舌ペロペロと人を舐める、妖怪舐め女ですヾ(๑╹◡╹)ノ"

と、言っても、この妖怪詳細も実はよく分からなかったりします。


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狂歌百鬼夜興
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舐め女02舐め女01
『狂歌百鬼夜興《きょうかひゃっきやきょう》』[天保元(1830)年刊、菊廻屋真恵美《きくのやまえみ》編、青洋《せいよう》画、虎岳《こがく》画]
大阪公立大学中百舌鳥図書館所蔵(CC BY)国書データベース
※カラーの画像は、こちらでご覧になれます。国書データベース
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【原文】

舐《な》め女

 化かしたる 客を送りて 後ろから 長き舌出す 舐め女かな  墨縄《すみなわ》


【現代語訳】

舐《な》め女

 騙して良い気にさせたが帰る後ろ姿を見送りながら、舐め女は「アッカンベー」と長い舌を出すのです。 by 墨縄《すみなわ》


haname【解説】

 舐め女を、騙しメロメロにする遊女に例えた狂歌です。
舐め」には、物理的に舐める行為ではなく、「舐め腐る[バカにする]「骨の髄まで舐め尽くす[金を搾り取る]意味が込められていると思われます。

 このページの挿絵は、謡曲『葵の上』を踏まえていると思われます。
『葵の上』一節に、
「不思議やな、誰とも見えぬ上臈《じやうらふ》[六条御息所]の、破《や》れ車に召されたるに、青女房[官女]と思しき人牛もなき車轅《ながえ》に取りつき、さめざめと泣き給ふ痛はしさよ」
 とあるので、ここでは舐め女官女姿で描かれ、破れ車を引いています。


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狂歌百鬼夜狂
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『狂歌百鬼夜狂《きょうかひゃっきやきょう》』[天明五(1785)年刊、平秩東作《へづつとうさく》編]狂歌百鬼夜狂 / へつゝ東作 [編]


【原文】

   舐《な》め女  真顔《まかほ》

 大方の 恐ろしなどハ 甘口に 消え返らする 舐め女かな


【現代語訳】

   舐《な》め女  by 鹿津部真顔《しかつべのまがお》

 大抵の恐ろしいことは、舐め女舐められた時恐ろしさに比べたら、どうってことないよ!


haname【解説】

『狂歌百鬼夜興』同様に、色仕掛け言葉巧み男性翻弄《ほんろう》する女性恐ろしさを例えた狂歌だと思われます。

 どちらの狂歌舐め女例えているので、舐め女どんな妖怪なのかはよく分かりません


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狂歌百物語
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舌長娘
『狂歌百物語《きょうかひゃくものがたり》』[嘉永六(1853)年刊、天明老人尽語楼《てんめいろうじんじんごろう》編、竜斎正澄《りゅうさいまさずみ》画]
※富山大学附属図書館ヘルン文庫所蔵 富山大学学術情報リポジトリ


haname 【解説】

『狂歌百物語』舐め女登場しませんが、類似妖怪「舌長娘」が描かれています。

 ベロン長い舌油を舐めるのでしょうか。


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絵本小夜時雨
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Shungyosai Name-onna.jpg
※Wikipediaより
『絵本小夜時雨』[享和元(1801)年刊、速水春暁斎作]



【原文】

   阿州《あしう》の奇女

 阿波《あは》の国に然《さ》る豪家《がうか》の娘《むすめ》、器量《きりやう》諸人《しよにん》に勝《すぐ》れしが、如何成《いかな》る因果《いんぐわ》にや、唯《たゞ》、男《おとこ》を舐《ねぶ》るの癖《くせ》有《あ》りと、言ゝ囃《はや》しけるが、或《あ》る若者《わかもの》、彼《かれ》が容色《ようしよく》ニ愛でゝ媒人《なかだち》を頼ミ、彼《か》の家《いへ》に入家《にうか》し、既《すで》に閨房《ねや》に入りけるが、娘《むすめ》は軈《やが》て聟《むこ》を捕《と》らへ、面《おも》てより足先《あしさき》まで悉《こと/゛\》く舐《ねぶ》りけるに、その舌《した》ざら/゛\と猫《ねこ》の舌《した》の如《ごと》くにして、堪《こら》へ難《がた》く、早《はや》/゛\逃《に》げ帰《かへ》りぬ。

 夫《そ》れより此《こ》の女《おんな》を猫娘《ねこむすめ》と異名《いみゃう》せしとなり。



【現代語訳】

   阿波国《あわのくに》[徳島県]のヘンな女性

 阿波国ある金持ちの家の娘は、顔立ちよりも良かったのですが、どういう前世の報《むく》いがあったのか、「ひたすら男を舐める癖がある」と、しきりにされていました。

 しかし、ある若者が、この娘美貌にイチコロになり、仲人を頼んで、この婿入りしました。

 早速、寝室に入ったのですが、はすぐに婿を捕まえて、から足先まで残らず舐め尽くしたのでした。

 そのザラザラ猫の舌のようで、婿耐えることができず、すぐに逃げ帰ったのでした。

 それから、この女性は、猫娘呼ばれるようになったということです。



haname【解説】


 おまけで『絵本小夜時雨』収録のお話を。
 舐め女を調べていると、必ずこの話が出てきます。
 確かに人を舐める女性ですが、「舐め女」と言う名称は使われおらず、「猫娘」と呼ばれています、ゲゲゲのゲ。(昔、「なめ猫」って流行りましたよね)
 というか、妖怪ではなく、単なる特殊性癖の持ち主ですね。
 いや、この時代の妖怪の定義は、今よりもずっと広範囲だったのかもしれません。


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三つ目アイコン 舐め男だよ三つ目ヾ(๑╹◡╹)ノ"


haname 知ってる、知ってる、風呂の垢《あか》とかを舐める妖怪だよね北見
ヾ(๑╹◡╹)ノ"


妖怪画本・狂歌百物語
京極 夏彦
国書刊行会
2008-08-01









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プロフィール

北見花芽

文学やったり音楽やったり美学を貫いたりしてる自由人です♪
一応、それなりに江戸文学の専門的な研究をして、それなりの学位を取得していますヾ(๑╹◡╹)ノ"

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